※10年近く前の作品ですが、感想に少なからずネタバレを含みます。ご注意ください。
作:森見登美彦 2012年11月25日
2010年に連載され、SF大賞を受賞した作品。2018年にはふりがなを振り、一部をリライトした「角川つばさ文庫版」も出ている。
イメージ曲「夢見る力に(P-MODEL)」
主人公は理論家で毎日様々な研究に取り組んでいる小学4年の「アオヤマ君」。MBTIのテストをさせたらINTJあたりになりそう。
そんなアオヤマ君が歯科医院の「お姉さん」や不思議なものとの出会いを経て、理不尽なもの(世界の果て)も受け入れて成長していく物語。あくまで、主人公の心の成長を描くことが中心なので、「お姉さん」「ペンギン」「クジラ」「海」の正体がはっきりと明かされることはなく、あくまでも主人公の出した仮説にとどまるのみである。
考察の中には、これらが「主人公の心の中の矛盾が具現化したもの」とする説があるが、他の人にも認識されているので、単なる精神的なものではないと思われる。(実は郊外の街や友だちがまるっと主人公の想像だったり?)
物語の舞台となる郊外の街は、作者が幼少期を過ごした奈良の郊外からヒントを得ており、物語も少年時代の出来事をベースにしているらしい。ちなみに、僕がなんの事前情報もなしに読んだときは、勝手につくばをイメージした。
まず、読んでいて感じたのは、主人公たちの住む世界が小学4年ということを考えても、そこそこ狭いということだ。小説の中で描かれるのは基本的には、郊外の街+αであり、更に、主人公は生まれてから海を見たことがないという。郊外で一軒家に住んでいたらこんなものなのだろうか。
また、自分の好きな分野について、真剣に語り合える友だちがいるのはちょっと羨ましいと思った。小学生の頃、僕にも友だちはいたけれど、理科について話せる人はいなかった。ゲームならよくやっていたのだが。
だから、一緒に研究ができる仲間がいるのはやっぱり良いな、と思ってしまった。
ところで、老婆心ながら、「アオヤマ君」のその後がちょっと心配だったりする。中学校以降、浮いて、辛い思いをするのではないかと。友だちがいるから大丈夫だろうか。
もちろん、うまく行けば「アオヤマ君」は信念を貫く立派なオトナになれるだろう。
それにしても、「アオヤマ君」たちがつけている研究ノートは面白そう。いつかやってみたいと思わずにはいられない。
余談
森見登美彦さんの作品で、他に読んだことがあるのは「熱帯」。こちらは不思議すぎてふわふわ浮いてしまう作品である。
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