※センシティブな内容を含みます。また、差別的と思われる表現を含みます。
昨年、僕はこんな記事を書いた。ここに書いたことがある意味現実のものとなるような騒動が、Fediverse界隈のある場所にて起こった。
はじめに
2022年10月27日にイーロン・マスクさんがTwitterを買収してから、Twitter情勢が不安定になったことを受け、僕はFediverse移民となった。いわゆる「11月民」だ。
僕がTwitterに懸念を覚えた理由の一つは、言論の自由・表現の自由の名の下に、差別的な投稿が増えるのではないか、ということだった。
最初にFedibirdにアカウントを作り、その後、ポップなUIに感動してMisskey(io)にアカウントを作り、最終的には自分でサーバーを建ててしまった。プログラミングに関してはほぼ素人だったので、苦労も多かったが、始めて自分のMisskeyにアクセスできたときの喜びもひとしおだった。
それからの数ヶ月、僕は平和なFediverseライフを楽しんでいた。鯖缶ことサーバー管理人同士の小規模な諍いはあったものの、あまり影響はなかった。
騒動
2023年4月23日、Misskey系で最も大きいサーバー(io)で、LGBTQ+関連のキーワードがフィルターされている、という疑いが出始めた。
Misskeyには、モデレーションの機能の一つとして、ワードフィルター機能がある。これは、特定の言葉を含む投稿を自動的に人の目に触れにくくする機能で、大抵は下品な言葉に掛けることで、不快な投稿が広く公開されるのを防いでくれる。ワードフィルターで弾く言葉は、サーバーのモデレーターや管理人が自分で決めることができる。
ちなみに、該当のワードは別に問題のある言葉でもなかった。
この時点ではまだ公式の声明も出ておらず、一部が反応している程度だった。
翌日になって、サーバーの管理人がワードフィルターを掛けた経緯や今後の対応など、公式に声明を出したが、このときの声明に関して、賛否両論があがった。詳しい事情は参考記事で読んでいただきたいのだが、管理人の声明に対して「そうだそうだ」と賛同する意見と、「差別的ではないか」という意見があった。しまいには、他のサーバーから流れてきた投稿に対して煽るようなリアクションがつけられたり、別のサーバーの管理人が該当のサーバーをブロックしてしまったりした(現在は解除)。
思索
騒動後の数日間、僕は色々と言葉にならない考えをめぐらしていた。そして、ゆっくりと文章とするべきではないかと思った。
騒動から約2週間、現在は騒動に関してはほとんど落ち着いているものの、改めて今感じたことを書いていきたい。
さて、4月24日に、管理人がワードフィルターについて声明を出した。
特定のワードをフィルターしたのは、そのワードを用いた差別的・攻撃的な投稿が行われ、当事者に不快感・苦痛を与えたため、だという。
僕は所詮おひとりさまサーバーの鯖缶でしか無いので、このモデレーションの是非についてはなんとも言えない。
その後、「LGBTQ+のような神経を使う投稿が嫌でTwitterから逃げてきたユーザーも多いので、LGBTQ+に関するデモ活動や意見の押し付けは控えてほしい。そうした投稿は別のサーバーでやってほしい」という旨の投稿がなされたのだが(現在は削除)、僕は違和感を覚えた。
また、管理人ではないものの、Misskeyの開発に関わるあるユーザーの「これだからLGBTQ+はめんどくさいと思われる」という投稿にも違和感を抱いた。
確かに、LGBTQ+に関するデモは存在する。Fediverseでも過去にハッシュタグ運動が行われたことがある。(参考記事)
個人のジェンダーやセクシュアリティ、LGBTQ+に関する問題は大切に扱う必要があるのも事実である。
しかし、自分としては「神経を使う」「嫌」「めんどくさいと思われる」と言った部分に得も言われぬ感情を覚えずにいられなかった。(「神経を使う」というのがネガティブな意味合いを持つ言葉だからかもしれない。)
SNSでのハッシュタグ運動の殆どはその背景に苦難の歴史がある。例えば人種差別や性差別、障害者差別といった差別問題は、歴史や社会から生み出された面を持つものであり、人間が人間として戦わねばならないものだろう。
ある種のマイノリティである僕自身も戦わなくてはならない。
SNSに「楽しさ」を見出す人々からすれば、そうしたものはあまり好ましくないように見えるのかもしれない。
Misskey系の該当のサーバーは特にSNSを「楽しい」ものとしたい人々が集まっているサーバーである。
分散型SNSなので自分にあったサーバーを探せば良い。
そうした事情は理解しつつも、やはり僕は何とも言えない気分を覚えてしまうのである。
そして、管理人の投稿についたリアクションはほとんどが「そうだそうだ」という賛同のものであった。
(なお、該当サーバーのユーザーが皆、管理人の声明に対して賛同しているわけではないことを断っておきたい。
実際、該当のサーバーの中にも、賛同ではないと思われる投稿もいくつか見られた。また、その後、管理人が「該当のワードフィルターを続けるべきか」というアンケートを行っているのだが、「フィルターすべきでない」の意見のほうが「フィルターすべき」よりも多くなっている。)
Misskey(io)がいつまで「楽しい」場所でいられるかは僕にはわからない。
なんとも言えない悲しさを覚えつつも、ioのマインクラフトサーバーを歩き、青春を思い浮かべ、このサーバーの将来はどうなるのだろう、と思うのであった。
補遺
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結局、この騒動が契機となって、テスト用とはいえ、僕はおひとりさまCalckeyサーバーを建ててしまった。
追記:CalckeyはFirefishになりました -
なお、該当サーバーのワードフィルターは現在は解除されている。
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ある投稿によると、この件で、追い詰められた当事者の方もいるようだ。
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2023年6月18日追記:4月から6月の間に「反差別」を謳うサーバーで差別問題に関する騒動が立て続けに起きた。騒動を通じて、僕も色々と考えることがあった。
参考記事
※参考にした記事(アーカイブのURLを入れているもの)については、かなり難儀な事情がありますが、事案をまとめている記事がこのサイトのみなので、ご了承ください。そのうち、自分で何らかの形で経緯をまとめることができれば、と思っています。
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