作:加納朋子,深緑野分,川端裕人,宮澤伊織,寺地はるな,雪舟えま,酉島伝法 2021年1月20日
イメージ曲「金星(平沢進)」
宇宙をテーマにした、7つのお話を収録したアンソロジー。「宇宙」といっても、それはかなり幅広いもので、家族のほっこりエピソードから、惑星が主人公の奇妙なSFまで、様々なお話を楽しめる。
どの話も甲乙つけがたいが、お気に入りを挙げるならば、「キリング・ベクトル(宮澤伊織)」と「小さな家と生きものの木(川端裕人)」だ。
「キリング・ベクトル」は地球人シフカに作られた殺し屋が冒険?する物語。 シフカはある目的から、殺し屋を作るのだが…短いお話しながら、壮大な世界観を感じられる、ワクワクする物語だ。
「小さな家と生きものの木」は、感染症の流行で、思うように観測ができなくなった天文学者の父と、小1の娘のある日のエピソードである。娘との交流の中で、父が「生物の進化の系統樹」と「惑星の進化の系統樹」がつながっていることに、気づく瞬間には、こちらもハッとさせられる。(父は、原始星の円盤にある有機分子の化学進化を研究テーマとしている。)
酉島伝法さんの「惑い星」もはずせない。あっと驚く設定と、壮大で幻想的な描写に引き込まれることは間違いない。
表紙のイラストは、「小さな家と~」に出てくる回転ジャングルジムだろう。イラストがまた魅力的だ。
短めの話が7つはいっており、良い意味で引き込まれすぎることがないので、中高生の朝読書の時間にオススメ。僕も「宇宙」について、何か短編を書いてみたくなる。
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